カテゴリ:本( 18 )

こころときめく本3つ

「ところで小関氏の本に採録されたカタログの貴重なカラー図版を眺めているうち、私は以前から引っかかっていたある疑問にひとつの回答を得ることができた。」

「『トトロ』の冒頭は、かつての引っ越しが荷崩れや転倒の恐怖と闘いつつ野の風を全身に浴びて進む一種の冒険にほかならず、三輪トラックの機動性はそうした冒険心を揺さぶる最良の要素だったと納得させてくれもする。何しろ娘たちは父親の仕事机の下に隠れて移動秘密基地みたいな空間にもう入り込んでおり、マックロクロスケだのトトロだのが出てくる家に住み着くまえから、三輪トラックの魔法にかかっているわけなのだ。村を走るボンネットバスはしっかりした四輪だし、(...)猫バスときたら脚は十二本もある。そんななかにあって、ふらついてはいるけれど奇妙な人間臭さを漂わせ、同時にむこう側の世界へ、楠の根元の大穴へ通じていそうな軽やかさをまとった三輪自動車に≪回送電車≫の遠い親類を見出して、私はいまささやかな幸福に浸っている。」

堀江先生の『回送電車』(新潮文庫)にある、
『トトロ』の、ややこしくない神話作用とでも言うべき「引っ越しについて」を読んで
この「小関氏の本」が見てみたいと専修室に配架させてもらいました。


『国産三輪自動車の記録。』
小関和夫
三樹書房
2002年。

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ついでに配架したもの二冊。

『発掘カラー写真
続昭和30年代バス黄金時代』
写真 満田新一郎
文 三好好三・福川博英
JTBパブリッシング
2006年。

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『発掘カラー写真 
昭和40年代バスロマン時代』
写真 満田新一郎
文 三好好三・福川博英
JTBパブリッシング
2006年。

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これら三冊、どんなに淀んだ瞳も、見ればきっと輝くにちがいない、そんな本です。
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by waseda-bungei | 2008-10-15 13:30 |

『ドゥルーズキーワード89』


『ドゥルーズキーワード89』
芳川泰久・堀千晶著
せりか書房


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文芸専修でもお馴染みの芳川先生が
仏文科の堀氏と共著でいい本を出版されました。
いいですよ、これ。
入門書として
頭から尻尾まで順々に読むも良し
ドゥルーズ辞典として活用するも良し
解説のみならず、
もちろん出典の明記とともに豊富な引用もあるので
読み終われば
否が応でも逃走線が引かれています。

「リゾームについて、ドゥルーズとガタリが「たぶんリゾームの最も重要な性質のひとつは、常に多数の入口を持つことだ」と書いているのを反芻したとき、そうしたどこからでも入ることができ、どこへでも思考の逃走線を引くことができ、そうした線の多様な軌跡じたいがひとつのリゾームとなり、そしてそのリゾームが思考の逃走線を引く人によって絶えず異なるものとして生まれてくるような、そんな書物を夢想したのだった」

はしがきにあたる「この本を手にとる人に」という文章の冒頭からの引用ですが、
これはそんな書物です。
専修室にも一冊あります。 
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by waseda-bungei | 2008-10-14 17:23 |

書評サイトをひとつ

書評サイトをひとつ、
Wikiの「書評」の項目でも取り上げられていないものを見つけたので
紹介しておきます。

BookJapan

取り上げられる本もさることながら
書評そのものを本のようにして読めるというレイアウトも素敵です。
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by waseda-bungei | 2008-05-28 14:45 |

青年よ大著を抱け



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考える人
特集 海外の長編小説ベスト100

2008年春号


今回の≪考える人≫にて
「大アンケート 私の「海外の長編小説ベスト100」」
という企画が行われています。
回答者が今の日本を代表する文化人総動員といった様子で
そうなると
もちろん文芸専修、文芸・ジャーナリズム論系の先生方も百花繚乱、
お答えになっています。
どの先生の答えも興味深いのですが、
共通して言えるのは
なんだかそれぞれの先生方の青春時代が透けて見えるぞ、ということです。
若い頃に読んだ分厚い本は
強烈な印象をのこすものなんだなぁというのがよく分かります。

さらに
このアンケートをふまえ、
「検証座談会」という鼎談が行われていて、
参加者は加藤典洋、豊崎由美、そして青山南、となっております。
しかもばっちり顔写真付き。
専修室に一冊、用意致しました。
興味のある方はどうぞ。
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by waseda-bungei | 2008-05-26 14:33 |

絵本を嗤う者は文学に泣く


名作と呼び声高い作品を中心に
専修室に絵本をたくさん配架させてもらいましたので報告いたします。


・さとうはるおくんがうさぎになっちゃった名作絵本
相野谷由起『うさぎのさとうくん』
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・もはや古典的名作
レイモンド・ブリッグズ
『ゆきだるま(スノーマン)』

あの暖かい絵でもほろりとさせる
愛する父と母への鎮魂
『エセルとアーネスト』
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・シャルル・ペローの『ロバの皮』からインスピレーションを受けた
繊細なタッチ、色使いで目をひきつける、
オードリー・フォンドカヴの絵と
内田也哉子の文という豪華なコラボ作品、
『わたしのロバと王女』
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・フランス独自の製本職人(ルリユール)を
あたたかいまなざしで描く
日本でもフランス本国でも話題になった本、
いせひでこ『ルリユールおじさん』
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・すみません、タイトルだけで注文してしまいました、
でもねじめ正一、谷川俊太郎、まどみちお
などなど
アンソロジーになっていて
注文して正解、
小池昌代編、スズキコージ画
『かさぶたってどんなぶた』
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・さらにもうひとつ、
椅子から転げ落ちるほど大胆且つ細心なタッチ
スズキコージ『エンソくんきしゃにのる』
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・数秒で読み切れてしまうけれど、それが実に惜しい、
谷川俊太郎・原詩、飯野和好・絵『おならうた』
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・すみません、これも、タイトルだけでグッときて注文してしまいましたが
はずれであるはずがありません
長谷川集平『ホームランを打ったことのない君に』
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・さらにもうひとつ
森永ヒ素ミルク事件を取り上げる
涙なしでは読めない名作
長谷川集平『はせがわくんきらいや』
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・ひとめ見て、ぬぉぉと唸って鼻も膨らんでしまう絵のタッチ、
黒田愛『三匹のぶたの話』
黒田さんは若くして既に故人となられていて
念願の絵本作家としてのデビューが残念なことに遺作となってしまいました。
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・ジ・青山南翻訳絵本シリーズ
カフカの『変身』にインスピレーションを受けた
ローレンス・デイヴィッド・文
デルフィーン・デュラーンド・絵
『ぼく、ムシになっちゃった』
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もうタイトルがダメだ(いい意味で)
ベネディクト・ブラスウェイト・作
『あおだすすめすすめ』
『きゅうこうだいそげいそげ』
『でっかいしごとだいくぞいくぞ』
『おいかけるぞおいかけるぞ』
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・そして最後に
絵本作家そのものに関する本を。
絵だけじゃなくて写真もいっぱい
『ジョン・バーニンガム わたしの絵本、わたしの人生』
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・ディック・ブルーナ、エリック・カール、
クェンティン・ブレイク、ジョン・バーニンガム、
レイモンド・ブリッグズ、M.B.ゴフスタイン、
6名の童話作家特集
『海外の絵本作家たち』(別冊『太陽』スペシャル)
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・なお、文芸・ジャーナリズム論系には
エドワード・ゴーリーがこれでもかとそろえられています。
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by waseda-bungei | 2008-04-23 15:39 |

別冊早稲田文学③のこと

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早稲田文学アーカイブ集第三弾!

別冊早稲田文学③


早稲田文学会から届いております。
三年生以上の文芸専修の学生は
専修室(33-2号館3階)まで取りに来て下さい。
相変わらず錚々たる顔ぶれ、
今まで読む機会に恵まれなかった作家たちを読んで
新たな発見をするのにちょうどよいアンソロジーです。



★童話作家以前の象徴派っぽい雰囲気、小川未明「薔薇と巫女」

★大正時代に既にこんなのあったのか!
暴走するメタフィクション、相馬泰三「卒倒」

★風貌よろしく、なんだか牛のよだれで愛撫されるような文体、室生犀星「鞠」

★ロシアか日本か、
揺れ動く樺太の中央高地に暮らす赤貧の姉弟の翻弄があまりに痛切、
宮内寒彌「中央高地」

★そりゃ、この人、モテる、しゃーない、壇一雄「帰心」

★そして誰も居なくなる、戦時中の都市を淡々と描いた、上林暁「風前の灯」

★ファルスとしての戦争をあぶりだす傑作短篇、火野葦平「碑と旗」

★なにかがとぐろを巻いて待ち構えているよう
あまりに不穏な、中井英夫「死者の誘い」


★そして
2007年度の卒論から
最も素晴らしかった作品
山田洋久「キング・クリムゾンの宮殿」


などなど
主なものを挙げてみました。
個人的にはとりわけ
宮内寒彌「中央高地」と火野葦平「碑と旗」を読んで
椅子から転げ落ちました。


皆さん、読みましょう。
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by waseda-bungei | 2008-04-22 14:08 |

鈴木信一著『800字を書く力―小論文もエッセイもこれが基本!』

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2007年度、
狭山高校から派遣研究員として
盛田先生や堀江先生の授業で
ともにした学生もいるかと思いますが、
そんな鈴木先生の著書が文芸専修室に届きました。

『800字を書く力―小論文もエッセイもこれが基本!』
という本です。

先生の息遣いが聞こえてくる
懇切丁寧な解説がいいというのみならず、
起承転結を意識しすぎて書けない人、
自分にはセンスがないと思い込んで書けない人、
てゆか
センスって何?
感性なんてほんとにいるの?
国語に正解/不正解はないってほんと?
といった
国語を巡る
迷信じみた常識に疑問を感じたことのある人におすすめします。
さらに
「読む」ということに
ウェートを置いているところも
ナイス。ヴェリーナイス。
高校生から大学生まで
老いも若いも読んでためになる本だと思います。
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by waseda-bungei | 2008-03-28 10:51 |

ザ・珍本ニュース

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「河童は我々人間が河童のことを
知つてゐるよりも遥かに人間のことを知つてゐます。
それは我々人間が河童を捕獲することよりもずつと
河童が人間を捕獲することが多い為でせう。
捕獲と云ふのは當らないまでも、
我々人間は僕の前にも度々河童の國へ來てゐるのです。
のみならず一生河童の國に住んでゐたものも多かつたのです。
なぜと言つて御覽なさい。
僕等は唯河童ではない、
人間であると云ふ特權の為に働かずに食つてゐられるのです。」

芥川龍之介『河童』より



というわけで
文芸専修に
奇妙な本が一冊届きました。
河童の国はどうやら芥川によるとあるようなのですが
実際、河童共和国から一冊、文芸専修室に届きました。

そのタイトルも

『河童尻子玉百図譜』

著者は

河童痴人


元人間、元日本人だったらしく
絵のみならず
日本語も俳諧味といっていいような味わいのある文章をお書きになっておられます。
内容は
尻子玉を求めて三千里とでも言いましょうか
織田信長やら徳川家康、石川五右衛門、小野小町といった歴史上の人物から
市井のひとびと、
果ては
動物まで
極上の尻子玉を
河童たちが求めて旅するものとなっております。
例えば
水面にたゆたうアヒルを
見上げて河童が
その尻子玉に思いをはせ
垂涎して


「アヒルかも白いかもよ」


と呟いたり、しています。


きっと河童共和国では
Qui Qui Quo Quo
などと河童語で書かれ
グルメ本として歓迎されていることでしょう。

いつでもこの本をお貸しできますので
興味のある人は
文芸専修室へ、どうぞ。



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by waseda-bungei | 2008-03-18 15:48 |

WBとか週刊読書人とか図書新聞とか

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旧年のことを言ったら誰が笑うのか、
ともかく誰かに笑われそうな気がしますが
昨年末に関する告知を。

まず
お待ちかねフリーペーパー『WB』11号が出ました。
専修室前にも積んであります。
詳しくはこちら

そしてこの早稲田文学の主幹であり、
文芸専修においても教鞭をとられている
市川先生と、評論家の中森明夫氏との対談が
顔写真つき(しかも涼しげ)で
昨年12月28日付『週刊読書人』に掲載されています。
タイトルは「二〇〇七年の日本文学回顧」です。
顔写真がなくったって
年が変わって旬が過ぎたきらいがあったって
やっぱり興味をそそるタイトルです。

また別に、
今度は『図書新聞』に
山本浩司先生の記事があります。
「海外文学・文化回顧2007」のドイツ編です。
また同じく高橋敏夫先生が「’07年下半期読書アンケート」に寄稿なさってます。

『週刊読書人』も『図書新聞』も専修室にありますので
立ち寄った際は読んでみてはいかがでしょうか。 
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by waseda-bungei | 2008-01-09 17:21 |

文芸専修室配架のお知らせ

60冊ほど専修室に本が届きました。
北村薫、角田光代、乙一、などなど今をときめく作家から
田山花袋、小谷野敦、佐伯一麦、島田雅彦、藤沢周、保坂和志、村田喜代子、大庭みな子、などなど渋い作家まで
はたまた
ペレーヴィン、ナイポール、ボーヴ、ぺナック、エシュノーズ、などなど海外の作家
のみならず
ワイン本やら建築本やら漢詩やら雑多なものまでを含めて
大学内の図書館にはないものばかり取り揃えました。
そのうち
文芸専修の先生方の本のリストを挙げておきます。

ジャック・ケルアック著、青山先生訳の『オン・ザ・ロード』d0033545_13372616.jpg

芳川先生監修の『日本文学にみる純愛百選』 執筆者には駿河先生も参加しています。d0033545_13385022.jpg












★野崎先生の著作は二冊。
安吾探偵の第二作、『イノチガケ 安吾探偵控』d0033545_13482593.jpg

『宮部みゆきの謎』d0033545_1350329.jpg













★他には
芳川先生の編集で『あらすじとエッセイで味わう ベストセラー世界の文学*20世紀①』という一冊もあります。

★また『京極夏彦の世界』には、野崎先生の「京極夏彦論・再説」
川崎先生の「ジェンダー・スタディーズの視点から読む京極ワールド」が収録されています。
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by waseda-bungei | 2007-12-25 14:10 |